にいがた百景

巻菱湖記念時代館(新潟市東区河渡〈こうど〉)

巻菱湖記念時代館の外観巻菱湖記念時代館の入り口
巻菱湖記念時代館(まきりょうこきねんじだいかん)は,新潟市東区河渡にある。
場所は製材工業団地の中で,第二貯木場の横である。
越後生まれの書家・巻菱湖(注)の作品や関連資料を展示する施設である。平成十六年(2004)に「巻菱湖記念館」として開館し,平成二十一年(2009)に「巻菱湖記念時代館」と改称した。
展示は毎月入れ替えられ,巻菱湖を中心に,江戸期の書画作品や関連資料を常に間近に見ることができる。
また当館は,菱湖に関する資料や作品の復刻出版,各種のイベントなどにも力を入れている。
資料の収集と整理,展示の企画や施設の運営,さらに資料の復刻・出版まで,すべて個人の手によって地道に続けられており,敬服に値する。

(注)
巻菱湖(まき りょうこ,1777-1843),本姓は池田,名は大任(おほに)。江戸後期の書家である。
越後国巻(現在の新潟市西蒲区巻)で生まれた。幼少から新潟町に住み,善導寺(中央区西堀通)の住職から書を学び,19歳で江戸に移り,亀田鵬斎(かめだ ぼうさい,1752-1826)に師事して書と詩を学んだ。31歳で書塾「蕭遠堂」を開いて教授した。「門弟一万人」とも称される。
菱湖はさまざまな書体を能くしたが,特に唐の欧陽詢(おうよう じゅん)に範をとった峻厳かつ端麗な楷書を得意とした。
江戸末期に作られた「海内當世書家竸」では西の最高位「大関」に列せられている(東の大関は頼山陽)。
学習者のために作った数種類の「千字文」がもてはやされたが,明治期になるとその平明な書風はさらに人気を博し,小,中学校の学習の模範としても尊重され,多くの版を重ねた。
書作品のほか,多くの詩を残し,また十書体(古文,大篆,小篆,古隷,章草,八分,今隷,行書,今草,破體)の起源と流伝を論じた『十體源流』の著述もある。

参考:巻菱湖記念時代館(公式サイト)

(新潟県新潟市東区河渡庚296-33)
2013.1.12


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