榎社(えのきしゃ)は,西鉄(天神大牟田線)二日市駅の北北西750メートルに鎮座する。
ここは,菅原道真公が左遷されて逝去するまで(901-903)居住した場所である。
治安三年(1023),道真公の慰霊のため,ここに浄妙院が建てられたのが起源である。
社号は,境内に榎の大木があったことに由来するという。「榎寺」とも呼ばれる。
当社は,道真公の昼夜の世話にあたった浄妙尼を祀っており,また天満宮の「御旅所」でもある。
毎年九月の神幸祭では,道真公の霊がここで一夜を過ごし,翌日,天満宮に遷御される。
鳥居の横に「菅公館址」の石碑がある。
現在の社殿は平成十三年(2001)の竣工である。
社殿の裏に,道真公に奉仕した女性を祀る浄妙尼社がある。
道真公の左遷時,二人の幼児もともに太宰府に下ったが,二人とも早逝した。
姉の紅姫は,道真公の死後,父の残した密書を手にひそかに太宰府を出たが,刺客の手によって非業の最期を遂げたという。
浄妙尼社の隣にある石塔は,紅姫の供養塔だという。
もう一人の愛児の隈麿(くままろ)を祀る祠(隈麿公奥津城)は当社の東200メートルにある。
隈麿は道真公より先に没した。
(福岡県太宰府市朱雀6丁目)
2017.10.26