諸国神社めぐり

香春神社(香春町〈かわらまち〉)

福岡県香春町の香春参道入口
香春神社(かわらじんじゃ)は,JR(日田彦山線)香春駅の北西,香春岳の一ノ岳の麓に南面して鎮座する。
『延喜式』(神名帳)に田川郡の三座として,「辛國息長大姫大目命神社」「忍骨命神社」「豐比咩命神社」が記されており,三座が後に香春神社としてまとめられたと思われる。
祭神は辛国息長大姫大目命(カラクニオキナカオホヒメオホメノミコト),忍骨命(オシホネノミコト),豊比咩命(トヨヒメノミコト)の三神である。
元来は,山頂が三俣に分かれた香春岳のそれぞれの山で祭られていた三神であろう。
香春神社の社伝には和銅二年(709)に「新宮創立」の記録があるので,この時に三神が現在地にまとめられたとも考えられる。
一ノ岳の神,辛国息長大姫大目命は新羅国から渡来してこの地に留まった神だとする伝承がある(『豊前国風土記』)。また新羅渡来の女神は比売語曽神(ヒメゴソ)だとする伝承もあり,その女神を追って来た都怒我阿羅斯等命(ツヌガアラシト)を祭る現人神社がJR採銅所駅の北にある。
忍骨命は二ノ岳の神で,アマテラスの御子の天忍穂耳命(アメノオシホミミ)とされているが,「骨」は石灰岩の山容に由来するとも考えられる。
豊比咩命は,採銅所駅に近い三ノ岳の神である。当社の北5キロメートル,採銅所駅の近くに古宮八幡宮と称する神社があり,やはり豊比咩命を主祭神としている。豊比咩命は香春神社の例祭時に香春神社に遷るとされる。
当社は早くから天台宗と関わりを持ち,「天臺別院豐前國香原社」と記す資料もある。三峰にそれぞれ山王社が建っていたという。

香春神社の参道から香春岳を望む
参道正面に香春岳の一ノ岳の岩壁が見える。山頂部分は石灰岩で白く光っている。
現在,石灰岩の採掘によって標高が300メートルほどになってしまったが,元来の標高は500メートルほどあった。神代以来,巨大な岩壁が神々しく聳えていたのである。
香春神社拝殿
拝殿は左右に回廊がある。
香春神社拝殿細部香春神社拝殿細部
拝殿の向拝部分。
香春神社本殿香春神社本殿細部
拝殿背後に流造の本殿がある。
香春神社本殿の狛犬と神像
本殿の前に置かれた狛犬など。

(福岡県田川郡香春町大字香春)
2010.2.12


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